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オープンアクセスとは
オープンアクセスとは
「オープンアクセス」(Open Access)とは、論文等の研究成果をオンライン上で、誰もが無料で利用できるようにすることです。略して「OA」と呼ばれることもあります。
広い意味では、あらゆる種類のデジタルコンテンツに制限なくアクセスできることを指しますが、研究成果のオープンアクセスと言った場合は、学術論文や研究データなどを、購読契約等の障壁なく自由に利用できる状態を指します。また、オープンアクセスやデジタル技術を前提として科学知識を誰もが自由に活用できる状態を指す「オープンサイエンス」(Open Science)という概念があり、オープンアクセスを含む、より広義な用語となっています。
オープンアクセス、オープンサイエンスは近年の世界的な潮流となっており、ユネスコ加盟国では2021年に「オープンサイエンスに関する勧告」を採択し、G7加盟国では2023年の科学技術大臣会合共同声明でオープンサイエンスの推進を掲げています。
早稲田大学では、2024年12月6日に「早稲田大学オープンアクセス方針」を策定し、大学としてオープンアクセスへの姿勢を示しています。早稲田大学オープンアクセス方針は、以下のページから確認することができます。
研究成果を
オープンアクセスに
するには
研究成果をオープンアクセスにするには様々な方法があり、どこで公開するかによっても方法が異なります。主には、「リポジトリ」と呼ばれる公開基盤等で公開する「グリーン・オープンアクセス(グリーンOA)」と、出版社のウェブサイト等で公開する「ゴールド・オープンアクセス(ゴールドOA)」の、2つの方法に分かれます。
グリーン・オープンアクセス(グリーンOA)
グリーン・オープンアクセス(グリーンOA)とは、論文等の研究成果を、リポジトリ等を通じて著者自身が公開し、無料で閲覧できるようにすることです。セルフアーカイブとも呼ばれます。リポジトリには、研究者所属機関が管理する「機関リポジトリ」や、特定の研究分野で広く認知されている「分野別リポジトリ」、研究分野を限定しない「汎用リポジトリ」などがあります。
早稲田大学では、機関リポジトリとして「早稲田大学リポジトリ」を提供しており、学内研究者を中心としたグリーンOAの公開基盤としてご利用いただけます。
グリーンOAの具体的な方法は、以下のページをご参照ください。
ゴールド・オープンアクセス(ゴールドOA)
ゴールド・オープンアクセス(ゴールドOA)とは、論文等の研究成果を、出版社が管理するウェブサイト等を通じて、無料で閲覧できるようにすることです。多くの場合、出版社に対して、論文単位でのArticle Processing Charge(APC)の支払いが必要となります。ゴールドOAに対応する学術雑誌(ジャーナル)は、以下の2種類に分かれます。
フルOAジャーナル
すべての論文がオープンアクセスとして出版されるオープンアクセスジャーナルです。論文ごとのAPC支払いが必要となりますが、購読料は発生しません。
ハイブリッド・ジャーナル
APCを支払った論文のみをオープンアクセスとするジャーナルです。雑誌自体の購読料は必要となりますが、一部のジャーナルでは購読料とAPCを一体化した機関契約を提供しており、「転換契約」と呼ばれます。代表的な転換契約にはRead & Publish契約があります。購読機関がオープンアクセス推進のために転換契約を結んでいる場合、論文著者のAPC支払い負担が減じられることがあります。
早稲田大学におけるゴールドOA支援の詳細は、以下のページをご参照ください。
その他のオープンアクセス
学協会等が、諸費用を負担してオープンアクセスでジャーナルを出版している場合があります。この場合、論文著者は追加の費用負担無く、研究成果をオープンアクセスにすることができます。このような形式は、費用負担が生じるゴールドOAと区別するため、ダイヤモンド・オープンアクセス(ダイヤモンドOA)と呼ばれています。
早稲田大学
オープンアクセス方針
本学で生み出された研究成果を学内外に広く公開することを通じて、学術研究の更なる発展と豊かな人類社会の実現に寄与することを目的として、「早稲田大学オープンアクセス方針」を策定しました。
内閣府による
即時OA義務化
公的資金のうち2025年度から新たに公募を行う一部の競争的研究資金を受給する者に対し、該当する競争的研究資金による査読付き学術論文(電子ジャーナルに掲載された査読済みの研究論文(著者最終稿を含む))及び根拠データの学術雑誌への掲載後、即時に機関リポジトリ等の情報基盤への掲載が義務付けられました。
オープンアクセスの
背景と国内外の動向
オープンアクセスの背景
オープンアクセス(OA)の背景には様々な要因がありますが、大きな要因として、学術雑誌(ジャーナル)市場の寡占化に伴う価格高騰と、インターネットによる情報流通の変革が挙げられます。ジャーナルの価格高騰は各国の研究機関で購読タイトル数の減少を引き起こし、それがさらに価格高騰につながるという悪循環に陥りました。これは、シリアルズ・クライシス(Serials Crisis)と呼ばれ、各国の研究機関や研究助成機関は価格交渉も含めて連携して問題に取り組むこととなりました。[1]この過程で電子媒体を前提とした学術情報流通の在り方を検討する流れが生まれます。2002年にはブダペスト宣言が出され、ここで世界初となるオープンアクセスの定義が示されます。翌2003年には、米国でベセスダ声明が、ヨーロッパでベルリン宣言が発表され、欧米を中心にOA運動が加速することとなりました。
グリーンOAとゴールドOAの展開
ブダペスト宣言では、具体的なOAの方法として、研究者自身が研究成果をインターネット上の公開領域にセルフアーカイブする方法(グリーンOA)と、オープンアクセスジャーナル(OAジャーナル)を投稿先として選択する方法(ゴールドOA)の2つが示されました。
この後、各国の研究機関では、グリーンOAの基盤として機関リポジトリが設置され、機関リポジトリ以外にも、学術分野ごとの分野別リポジトリやプレプリントサーバが公開されました。日本では国立情報学研究所が2005年度から行った事業によって各大学で設置が進み、早稲田大学でも2005年に機関リポジトリとして「早稲田大学リポジトリ」の提供を開始しています。
ゴールドOAについては、OAジャーナルの創刊や購読型からOAへの転換が進み、この流れは現在も続いています。[2]一方で、既存の購読型ジャーナルにおいては、出版社が論文単位のOAオプションを著者に提供するようになりました。これは、フルOAジャーナルとは区別して、ハイブリッド・ジャーナルと呼ばれます。フルOAにせよ、ハイブリッドにせよ、論文単位でのOA処理費用であるAPC(Article Processing Charge)の支払いが必要となるのが、ゴールドOAの特徴です。
転換契約とOA2020
ハイブリッド・ジャーナルは雑誌としての購読料を維持しつつAPCを徴収するモデルであるため、APCの支払額が増加するにつれて、出版社による二重取り構造が問題となりました。また、OAジャーナルへの転換対応も依然として問題となっています。
こういった問題に対し、出版社は、購読料とAPCを一体化し、各機関がこの契約を拡大することで将来的にOAジャーナルへ転換する方法を提案するようになりました。これは「転換契約」と呼ばれ、代表的な契約にはRead & Publish 契約があります。一方、国や研究団体が各研究機関に代わって特定のジャーナルのAPCをすべて支払って、フルOAジャーナルに転換する試みも行われています。[3]
2016年には購読型ジャーナルをOAジャーナルに転換する国際イニシアチブとして「OA2020」が創設されました。日本からはJUSTICE(大学図書館コンソーシアム連合)が関心表明に署名し、OA2020ロードマップを策定しています。
研究助成機関によるオープンアクセス義務化
欧州では、2018年に11の研究助成機関によるcOAlition Sが組織され、参加機関が助成した研究成果の完全即時のOAを義務付ける「プランS」を始動しました。米国では、国立衛生研究所(NIH)が2008年から助成研究にパブリック・アクセスを義務づけていましたが、2022年には、科学技術政策局(OSTP)より、連邦政府の助成研究による研究成果と根拠データの即時OAを義務付ける方針(ネルソン・メモ)を発表し、各研究機関では2025年末までに対応することとなっています。日本では、2023年に閣議決定された統合イノベーション戦略2023において「2025年度新規公募分からの学術論文等の即時オープンアクセスの実現」が明記され、2024年に「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」が発表されています。
オープンサイエンスと国際声明
オープンアクセス推進と同時期に、欧米を中心にデータのオープン化を推進する取り組みが進みました。2013年のG8サミットでは「オープンデータ憲章」によって政府系データの公開が合意されるとともに、G8科学大臣会合の共同声明において、研究データのオープン化が確約されています。[4]
このような流れの中で、オープンアクセスは、研究データ流通を含む「オープンサイエンス」の一部として位置づけられるようになりました。ユネスコ加盟国では2021年の総会で「オープンサイエンスに関する勧告」が採択され、G7加盟国では、2023年5月に開催された仙台科学技術大臣会合後の共同声明で「科学研究の自由と包摂性の尊重とオープンサイエンスの推進」を掲げています。
- ^1998年に、米国研究図書館協会(ARL : Association of Research Libraries)が中心となっ
てSPARC(Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition)が設立されました。この活動は世界に波及し、日本では2003 年にSPARC Japanが設立されています。 - ^OAジャーナルは「DOAJ: Directory of Open Access Journals」で調べることができますが、ハゲタカジャーナルと呼ばれる悪質なOAジャーナルへの注意も必要です。
- ^代表的なものにはCERNが実施する高エネルギー物理学分野のSCOAP3プロジェクトがあり、各国から拠出金を募って2014年から10誌のOA化を実現し、現在も継続されています。
- ^日本では、政府系データについては2016年に官民データ活用推進基本法が成立し、研究データについては2021年の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」に具体的な方針が記載されました。
オープンアクセスの
メリットと意義
学術論文のオープンアクセス化による研究者のメリットには、以下のような点が挙げられます。
- 購読料による閲覧制限なく、誰でも自由に論文へアクセスできる状態になることで、より多くの研究者が内容を閲覧可能になります。
- 研究成果の発見性が増大し、被引用数が増加し、グローバルに研究の影響力が高まることが期待されます。
- 他分野の研究者や、政策立案者、企業、一般市民などの非研究者にも研究の知識を提供でき、学際的な連携や社会的影響力が強まります。
- 研究成果や研究データが公開されることで、他の研究者が結果を検証したり、関連研究を進めやすくなります。
- 研究助成機関のオープンアクセスでの成果公開を義務付ける例が増えており、資金提供の条件を満たすことができます。
- 公的資金で行われた研究成果を無料で提供することで、研究成果を社会へ還元し、研究の理解や支援を広げます。
粗悪学術誌・出版社
(Predatory Journals
/ Publishers)
粗悪学術誌・出版社(Predatory Journals / Publishers)への投稿・掲載の問題点
近年、研究成果のオープンアクセス化の進展とともに、オープンアクセスジャーナルの中で、十分な査読を行わずに論文を掲載し、高額な掲載料を要求する粗悪な学術誌・出版社(Predatory Journals / Publishers:ハゲタカジャーナルや捕食出版社と呼ばれる)が問題視されています。
公刊論文数の増加を図るため、安易にPredatory Journalsへの投稿・掲載を行うと、不当な額の掲載料を搾取されるのみならず、かえって自らの業績評価を下げ、場合によっては本学の研究活動に対する信頼にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
粗悪学術誌・出版社(Predatory Journals / Publishers)への投稿・掲載を防ぐためには
学術誌へ投稿するにあたっては、例えば下記のデータベースやウェブサイトのチェックリストの内容を参考にするなどして、Predatory Journalsへの投稿リスクを十分に理解して、投稿先を検討するよう努めてください。
データベース
※利用対象者:本学図書館サービス利用対象者であれば利用可能です。
※学内ネットワーク経由で利用可能(IPアドレス認証)です。
※学外ネットワークから利用したい場合は次のサイトをご確認ください。
※利用する前に必ず以下の注意事項をご確認ください。
- 粗悪学術誌の完全なリストは存在しないため、このデータベースの情報は補助的に利用してください。
- このデータベースに掲載されている学術誌であっても、実際には粗悪学術誌ではない可能性もあることにご留意ください。
- このデータベースに掲載されていない粗悪学術誌も存在しますので、十分に注意してください。
チェックリストのあるウェブサイト
各ウェブサイトに記載されている主なチェック項目は以下のとおりです(すべてのチェック項目は各サイトで確認してください)。
Think. Check. Submit
- あなたや同僚は、そのジャーナルについて知っているか
- そのジャーナルに投稿された論文を、以前読んだことはあるか
- その出版社の連絡先はすぐにわかるか
- そのジャーナルは、どのような査読を行うか明白か
- 請求内容は明瞭か
- その出版社は、COPE(Committee on Publication Ethics:出版倫理委員会)に所属しているか
- そのジャーナルがオープンアクセスの場合、
- そのジャーナルはINASP(科学出版物入手のための国際ネットワーク)のオンラインジャーナルプラットフォーム(バングラデシュ、ネパール、スリランカ、中米、モンゴルで出版されたジャーナルの場合)、またはAJOL(アフリカジャーナルズオンライン:アフリカで出版された場合)にホストとして招待されているか
- その出版社は他の業界団体に所属しているか
Editage Insights
- ジャーナルのウェブサイトに正式な連絡先情報が記載されているか
- 複数の領域が対象となっていないか
- 編集委員には専門分野とのつながりが深い、著名な研究者が含まれているか
- 高額な論文掲載料を要求していないか
- 良質な論文を掲載しているか
- 著名な出版社協会のメンバーか
- ICV(*)を採用していないか
(*ICV(Index Copernicus Value):疑わしいジャーナルの評価基準で、Predatory Journalsが好んで使用しており、高名なジャーナルがICVをウェブサイトに記載していることはない) - 論文の撤回方針を明確にしているか
- 出版や迅速な査読を保証していないか
「学術論文に係る補助制度」における粗悪な学術誌・出版社への対策について
2019年4月より、「学術論文に係る補助制度」の申請時(原著論文をジャーナルに投稿する場合)にジャーナルチェックリストの添付を必須とします。ただし、Scopus, CiNii Articles, Web of Science収録誌の場合は同チェックリストの提出は不要です。
「学術論文に係る補助制度」については以下をご覧ください。